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馬車道の路地裏に イタリアワイン好きが集う バール「Clà(クラッ)」 店長・シェフ 佐藤稜さん
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    sugikoiwagami

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    馬車道通りから1本入った路地裏、通称「こんばんは横丁」に、横浜のワインラバーたちで夜な夜なにぎわうイタリアワイン&バール「Clà(クラッ)」があります。

    常時用意されているワインのボトルは200本ちかく。北はヴァッレ・ダオスタ州から南のシチリアまで、イタリア全土のワインがそろっていて、ワイン好きの探究心をくすぐります。バイ・ザ・グラスでもスパークリングは2種類、白あるいはオレンジ色のワインなら数種類、ロゼや赤ワインも数種類がリストにあるので、グラスが次々と空いていってしまいます。

    ワインのための料理をつくる「Clà」の4代目シェフであり、店長の佐藤稜さんは32歳。ソムリエ資格も持っているので、ワインがすすむ料理と、その料理に合うワイン選びはお手のもの。そんな佐藤さんを紹介しつつ、「Clà」の魅力をお話しします。

    馬車道「こんばんは横丁」のカウンターはワイン好きの特等席

    馬車道通りから路地に入ると「Clà」の灯りが誘いかけます

    カウンターとテーブル席のこぢんまりとした店内

    開店は2010年。店名の「Clà」の由来は、エミリア=ロマーニャ州の方言からきていて、「あっちだよ!」という意味。同じ名前のワインもあります。

    あたたかみのある木製のカウンターには毎晩のように訪れる常連客が鈴なりに。止まり木に腰をおろさずに立ち飲みスタイルを好む人も。このカウンターに思い出があるのでと、金婚式の乾杯を交わす夫婦の姿もありました。

    いっぽう、初めて訪れたという若い女性客は、佐藤さんやホール担当のソムリエ岡本千里さんの気さくな話しかけに、「ひとりでも安心して過ごせました。どのワインを選べばいいかのアドバイスをもらえて、居心地がよかった」と頬をほころばせます。佐藤さんが大切にしているのが、自分自身もスタッフも仕事を楽しもう、明るく楽しくやろう、というポリシー。きっとそれが功を奏すのか、一度訪れた人はリピーターになる率が高いのだそう。

    2つの転機が導いた 料理とワインの道

    佐藤さんは、福岡県柳川市で20歳まで過ごし、東京のイタリアンレストランを経て、福岡のシチリア料理店で腕を磨きました。シェフ修行に励んでいた26歳のときに、初めて旅したシチリア島で転機が訪れます。3か月間のシチリア滞在で、ワイナリー訪問を重ねるうちに「ワインをもっと勉強したい」という思いに駆られたのです。

    帰国して、横浜・馬車道のイタリア専門のワインショップ「il calice(イル・カーリチェ)」の求人を見つけた佐藤さん、なんの縁もなかった横浜に躊躇なくやってきて、ワイン修行がはじまりました。その修行を支えたのは、横浜のワイン愛好家たちだったと振り返ります。当時の「il calice」では店頭試飲会を毎日開催しており、ときには常連客どうしで意気投合、佐藤さんに「あのワインを飲んでみたいから開けてくれ」と頼むこともしばしばでした。いろいろな地域のさまざまなぶどう品種のワインを日々学ぶことができたのです。そういうわけで、「横浜のワイン好きの方たちに育ててもらいました」という発言があるのです。

    無事にソムリエ資格も取得し、ワインを極めることに夢中だった佐藤さんに、また新たな転機が訪れます。2022年、姉妹店の「Clà」のシェフを臨時に兼任することになったのです。

    ワインを勉強してから久しぶりに料理に取り組んでみると、ワインと料理の両方を追求することが楽しくなってきました。その後ほどなく、「Clà」の専任シェフに就任しました。

    「ワインをおいしく飲むために」と佐藤さんがつくる料理は、得意のシチリア料理を中心にしたイタリア各地の料理。「なるべくシンプルに」「深夜の胃袋にももたれないカラダにやさしいものを」を心がけているそうです。

    ワインをおいしく飲むためのやさしい料理

    まず頼むのは「前菜の盛り合わせ」。今日のお皿には「初ガツオのカルパッチョ はっさくと新玉ねぎ添え」
    「新ジャガとチーマ・ディ・ラーパ(イタリアの菜花)のポテサラ」「ブロッコリーとレモンのフリッタータ
    (イタリア風オムレツ)」「カリフラワーとパプリカとゆで卵のナポリ風サラダ」が。
    スプマンテ(イタリアのスパークリングワイン)がぴったり。
     
    今日のパスタは「富山のホタルイカと菜の花の手打ちオレッキエッテ(耳たぶ型パスタ)」
    白ワインをとおもいきや、意外にもプーリア州の土着品種ぶどう「ススマニエッロ」でつくられた赤ワイン
    が合うとすすめられました。

    「イタリアのマンマ風ミネストローネ」は野菜の水分だけで半日間煮込みます。
    佐藤さんが最も大切にしている料理とのことで、来るたびに必ず頼むファンも多いそう。

    「豚バラ肉を巻いた甘劇葱のマンジャ・エ・ベーヴィ(食べて飲め!の意味)」
    シチリアのロゼか赤ワインが最高の組み合わせらしい。

    ソムリエ兼ホールスタッフの岡本さん(「おかちゃん」の愛称で親しまれています)もワインの相談は
    なんでもこい。万一ワインが足りなくなったら、2分ほど離れた「il calice」にひとっ走り。
    岡本さんは「il calice」のスタッフとしても働いています。

    黒板にはその日の料理とワインについての説明が。

    趣味と仕事をリンクさせるインストラクター資格

    佐藤さんの趣味はロック・クライミング。お休みの日には仲間と連れ立って、攻略したいと狙う山へと遠征を行います。その仲間も横浜のジムや遠征先の岩場で知り合った、年齢も職業もさまざまな友人たち。クライミングの魅力は、1回ではけっしてうまく登れることはなく、何度もトライして、ときには2年越しで攻略できたときの達成感がたまらない、のだそう。

    そんな遠征のおりの帰りのリュックは、現地で仕入れた産直野菜でずしりと重くなるそう。シェフの性分なのでしょう。

    ロック・クライミングの趣味とシェフの仕事をリンクさせたいと、最近、「アスリート栄養食インストラクター」の資格を独学で取得しました。筋肉増強や持久力アップのための栄養と食事の知識は趣味仲間に共有できるうえに、本職の「Clà」のシェフとしては、疲労回復のための栄養や、メンタル面でのリカバリーに効果的な栄養の知識がおおいに活かされているそうです。

    もちろん食べることとワインが大好きなのは当然のこと。昨年10月にイタリア・トスカーナに研修に行ったおりには、78皿(!)を食べ尽くし、ワイナリーを4か所訪問しました。

    2023年10月に開かれたトスカーナ研修の報告会では、佐藤さんが食べたトスカーナ料理の数々の写真と、
    訪問した4つのワイナリーのワインのリポートがびっしり壁を飾りました
     

    まちとのつながり

    夕暮れとともに提灯やネオンが輝きだす「こんばんは横丁」

    毎年11月に開催されている「こんばんは横丁まつり」へのワゴン出店を行って、ワンコインでワインを販売、馬車道をふらりと訪れた人にカジュアルにイタリア・ワインの魅力を伝えています。今後は近隣の飲食店とのコラボイベントも計画しているそう。 また、常連客のなかには、ご近所の飲食店のシェフたちも。仕事終わりにワインで締めくくろうと「Clà」を訪れます。その顔ぶれは「ほおづき(小料理屋)」「PRIMO(プリモ)(イタリアン)」「鳥炎(焼き鳥)」「丸和(とんかつ)」とさまざまなジャンルです。佐藤さんとのシェフどうしの会話がはずむのだとか。夜ふけの「Clà」はプロの料理人たちの心も癒す場所になっています。

    馬車道の路地裏にあるヨコハマ・ワイン・ラバーズのためのスツールは、これからも愛され、あたためられつづけるにちがいありません。

    Shop info店舗情報

    イタリアワイン&バール Clà(クラッ)
    住所
    横浜市中区住吉町5-62
    営業時間
    17:30〜22:00フードL.O.ドリンク23:00L.O.(24:00close)
    定休日
    日・祝
    備考
    最寄り駅:JR関内駅より徒歩5分、みなとみらい線馬車道駅より徒歩4分 席数 カウンター8席、テーブル4名2席、2名1席
    ヨコハマフードラバーズ装飾
    ヨコハマフードラバーズ装飾
    ヨコハマフードラバーズ装飾