JR石川町駅の元町口（南口）を出てすぐ、ローカルな商店街の一角に世界の香りがする。
いつも賑わう店内は、おだやかでありながらカラフルな異国の風がふいている。

ジェイハンは、2014年秋にオープンした、店主のバスマジュケマールさんと奥さまのバスマジュあづささんで経営されているフレンドリーで本格的なトルコの家庭料理店。ふとした時に恋しくなるこの味は一体なんなのだろう。トルコ料理の魅力について、そしてお店をここで続ける理由について、あづささんにお話しを伺った。

「もともと、主人のお兄さんが日本の人と結婚して、表参道でトルコ料理店を構えたんです。しばらくしてお店が忙しくなり、30年ほど前、まだ20歳だった主人が呼びよせられ、お店の手伝いを始めました。ちょうど湾岸戦争の頃でした」

「その後、私と結婚して、お兄さんのお店から独立し、2014年11月にここでお店を始めました。私はもともと横浜生まれなので、子供ができた時に東京から横浜に戻り、こちらでお店を構えようということになりました」

お店を構えた場所は、石川町。

元町や山手もすぐ近くの立地でありながら、この「ひらがな商店街」では地元の人たちが立ち話をしているような穏やかな日常が流れている。魅力的な個人の飲食店も多く、裏フェスなどのお祭りでも多いに盛り上がるエリアだ。

この場所を選んだきっかけや、お店を構える良さを伺った。

「主人が自転車でぐるぐると回って、この物件に出会いました。海も近いし、外国の方も多いので気に入ったみたいです。このあたりは、関内や横浜ほど人が混み合っているわけでもなく、すこし静かで落ち着いています。私たちは大人数をこなすのに慣れていないのでちょうどいい」

「山手に住んでいる外国の方や、山下公園や元町も近いので観光客の方もいらっしゃいます。ええ、そんなところから？って驚くくらいにいろいろな国から。特に外国の方はトルコ料理が好きな方が多いので、うちのお料理の客層に合っていたのかなと思います」

トルコ料理は、世界三大料理のひとつ。

オスマン帝国の時代に広大な領地をおさめていた歴史から、料理も広範囲にわたり深められたのだそう。

「中華っぽいのもあれば、イタリア、中東っぽいのもあるし、色々な要素がある。すごく辛いわけでもないし、油っぽいわけでもない。意外と万人にウケる味です。イスラム教が多いですが、そこまで厳しくないのでお酒も飲みます。葡萄の産地なので、ワインも美味しいです」

おすすめは「トルコ家庭料理セット」（税込1,580円）。

日替わりの煮込み料理、茄子料理のカルヌヤルク、前菜やスープ、食後にはトルコのアイスや紅茶もついて、大満足なコース。身体にも心にもじっくりと沁みる。

料理のお供に、トルコワイン「ヤクート」（グラス税込840円）と人気の蒸留酒「ラク」（税込800円）を注文。昼間から幸せすぎる…そしてどちらも料理にとても合う。

トルコの食文化は深い。広い。

「主人は、お母さんがお料理すごく得意な方だったので、母の味を舌が覚えていて、そのお母さんの味を再現しながら作っています」

「トルコ人って、自分の料理にプライドがあるような気がします。大好きで、他の料理よりもまずは自分の料理を食べる。きっと自信があるんです、自分の料理に」

「化学調味料もほとんど使わないので味付けはすごくシンプルです。塩とコショウ、あとはスパイスやハーブ。日本料理みたいにすごく繊細なわけでもなく、大雑把な感じなんですけど、ちゃんとまとまっているんです」

食後の紅茶は視覚的にも幸せになる。

「トルコは紅茶の国。シンプルにストレートで飲むんですけど、濃さなど、こだわりがあります」

店内は満席。
友達と、家族と、カジュアルに楽しめるトルコ料理の世界。

帰り際に話した、外国のお客さんも「ここはすごく美味しい！」と絶賛していた。

”ちょうどいい” 店内では、お客さん同士の距離も心地よく、
喋りたいときにはつながることができる。

あづささんの笑顔とケマールさんの美味しいトルコの味に
胸が踊り、旅をしたあとのような帰り道だった。

ぜひ実際に、トルコ料理の世界に浸ってみてください！