- 桜木町・野毛
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武田 正史
同じライターの記事一覧NEW PORTで大人気の“横浜の顔”として有名な「センターグリル」。ケチャップ味のナポリタン発祥としてもその名を知られ、洋食文化の要を担う老舗レストランです。
グレーの外壁に等間隔で並ぶ木枠の窓、CENTER GRILLとアルファベットで書かれた店名が、どことなく横浜の港町を思わせる佇まい。ひときわ明るい青色のファサードを冠したドアから店内へ足を踏み入れると、ふしぎな形のライトが目につきます。どれも昔からあるもので、店長いわく「今では手に入らないでしょうね」とのこと。1階と2階に席が設けられており、ライトや時計など同じ物はないにもかかわらずどちらもレトロな雰囲気。暖炉、イタリア・ベネチアの街を描いた絵、2代目が20年前にケニアを訪れた時におみやげとして持ち帰ったゼブラの壁掛けなどが、木を基調とした店内を彩っています。階段を昇ると、かつては別の建物だった隣家をくっつけて改装したテーブル席が。屋根裏部屋をぶち抜いたことにより高い天井と大きくとられた窓は、どことなくロッジを彷彿とさせます。
桜木町駅や馬車道駅から徒歩5~8分ほどの野毛商店街の一角にある店舗にて、3代目店長・石橋正樹さんにお話を伺いました。
ひとりでも家族でもさまざまな人に愛されるお店でありたい
―今回センターグリルを取材することになり、NEW PORTチームのメンバーから口々に好きなメニューが挙がりまして、横浜市民のセンターグリル愛を切々と感じました。本日はお店の歴史や3代目店長の思い、メニュー裏話などを聞いていきたいと思っています。
まずは現在に至るまでのお店のストーリーを教えてください。
「センターグリルは初代が昭和21年(1946年)に創業しました。私が3代目になります。創業当時は戦後間もない時期で、自分が生まれ育った街でアメリカ人が口にする憧れの味を洋食として提供したいという思いで始めたそうです。初代は『ホテルニューグランド』の初代料理長が経営していたホテルで働いていて、その経験を取り入れたメニューを代々受け継いできました。私が携わるようになったのは22歳の時。2代目が今も一緒にやっていますけどね。今は厨房にシェフが4人います。平日だと近隣で働く方が多いですが、週末は家族連れの方が動物園やみなとみらいで遊んだ帰りに寄ってくださったりと、いろんな方に来ていただいています。」
-60年以上も続いているのですね。ご自身がいざ継いでいくとなった時はどんな心持ちでしたか
「洋食屋さんとして、今その時の味を継承して、この地で何代も続けられるようにがんばっていきたいなと思っていましたね。僕が入ってしばらくしてから東横線の桜木町駅がなくなるなど野毛近辺が静かになった時期もあったのですが、今はまた活気が出てきてにぎわうようになってきました。昔は仕事帰りの方が飲みに立ち寄る街でしたが、今は野毛の街も有名になって若い人が増えたなという印象です。2年前にはリニューアルもしました。広くなり、若い人でも来やすくなったんじゃないかなと思います。」
―代々続く味を守りながらも、改装で席数を増やすなどの工夫をしながら切り盛りされているとのこと。横浜という土地柄、飲食店の種類や数も多いなかで、この店ならではの特徴はどんなところですか?
「どちらかというと大衆的な洋食屋さんなのでどなたでも来やすいですし、多くの人が好む料理が多いかなと思います。かしこまりすぎず、若い人でもサラリーマンの方でもひとりでも気軽に入りやすく、いろいろな人に楽しんで味わってもらえるような洋食屋さんを目指しています。」
常連さんのリクエストからメニューを考案
–創業時に最初に提供したメニューはやはりナポリタンでしょうか?
「当時のメニューを見るとナポリタンはもちろん、ハンバーグやカレーライス、スパゲッティ、今はなきサンドイッチがあったんですよね。洋食屋として戦後オープンするにあたって、憧れのアメリカ人が食べていて当時はめずらしくちょっと贅沢だった料理を提供するという心持ちだったんじゃないかなと。」
―メニューには子ども心に憧れるような王道の洋食が並びますが、注文が多い人気のメニューはどちらですか?
「ナポリタンはやはり人気もありますし、ナポリタン、オムライス、ハンバーグという洋食屋さんの定番メニューでしょうか。ファミリー層も多く、気軽に食べられるという点でもその3つが王道でお客様からの注文も多いですね。」
–お客様からのリクエストで生まれたメニューもあったりするのでしょうか?
「ランチメニューに多いですね。たとえばスパゲティランチはスパゲティとチキンカツとライスがついているのですが、もともとはスパゲティではなくハンバーグだったんです。「ハンバーグじゃなくてスパゲティにできる?」「スパゲティにチキンカツつけられる?」「ライスもつけてもらうことできる?」というお客様からの要望を受けて、「そういうセットつくってみようかな」と生まれたメニューですね。オムライスにチキンカツがついている『特製浜ランチ』も、今はトッピングでアレンジできるお店も増えてきましたが当時は少なかったなかで、リクエストに応えてつくってきた感じです。常連の方からリクエストがあるなど、お客様との距離は近いですね。“安くてボリュームのある料理を”というのが昔からのこだわりで、今でも全体的にボリュームは多いですが、もちろん量の調整も可能です。」
–ご自身がお客様として来たら何を注文しますか?
「うーん・・・(しばし考えて)ランチメニューのスパゲティランチかな。スパゲティイタリアンとチキンカツとライスとサラダがワンプレートにあって、ボリュームがあって850円なんです。ボリュームもコストパフォーマンスもよくて、頼みたくなっちゃうかな。運動好きの私でも満足します(笑)。」
–友人に「今度お店に行くんだけど何頼んだらいいかな?」と聞かれたらなんと答えますか?
「2人だったら、ナポリタンと浜ランチの2つをおすすめしますかね。浜ランチはオムライスとチキンカツが入っているので、この組み合わせだとナポリタン・オムライス・チキンカツの3種類を食べられて2,020円なんです!この2つはいちばん手堅くセンターグリルを楽しめる組み合わせです。」
–それはなんと贅沢な…!いろいろな味を楽しめるのはうれしいですよね。こだわっている調理法や食材はありますか?
「ナポリタンだと2.2mmの太麺のスパゲティをつかっていることと、ひと晩寝かせてモチモチ感を出して提供することはこだわりですね。昔から同じ材料・同じ調理法でつくり続けているので、今ではめずらしくなった昔ながらの太麺のナポリタンを味わえるというのは特徴といえるかな。“安くボリュームある料理を”というのがお店としてのこだわりなので、昔からのなじみの仕入れ先と長くお付き合いしています。」
–味や調理法を変えたりしたことはありましたか?
「基本的には大きくは変わっていないですね。創業間もない頃を知る方が今来たとしても、当時に近い味を楽しんでもらえると思います。」
センターグリルに人が集まる理由
–忘れられないお客様との思い出はありますか?
「たくさんありますが、今までにない現在の状況で特にお客様とのつながりを感じたことが最近ありました。毎年年に2回ぐらい宴席で訪れてくれる30-40人ほどのグループがあるんですね。今お店にも行きづらい状況下で「今はいけないけどお店のために何かできることない?」と申し出てくれたんです。家庭で楽しめるナポリタンソースや麺があるのでそれをお届けすることにしたら、全体で100名近くいるグループ内で50-60名の方が買ってくださって。普段通販はしていないので、予想外の反響にあたふたしながらも発送業務を行いました。「落ち着いたらまたおうかがいしますね」とお声がけいただいたり、「おうちでナポリタンつくりました。おいしかったです。」と喜んでいただいたりと、本当にありがたいなあと思いましたしうれしかったですね。」
–多くの方に愛されているんだなあと感じますね。長く通い続ける常連さんも多くいらっしゃるんじゃないでしょうか?
「みなとみらい開発前は、三菱重工の造船所やドッグヤードがあったんですよね。当時20年ぐらい前は出前をしていて、よく届けていたんですね。当時働いていた方たちが定年を迎えた後、グループで今でもお店に来てくださったり。昔からのお客様は多いですね。」
デリバリーならではの楽しみ方
―今はデリバリーやテイクアウトが主流ですが、デリバリーならではの楽しみ方やおすすめはありますか?
「洋食プレートは店舗ではメニューに載せていないデリバリーならではのメニューなんです!プレートAはハンバーグ・エビフライ・カキフライ、プレートBはオムライス・ナポリタン・ハンバーグの王道3品が入っています。大きめのお皿ワンプレートに入っていて、家族4-5人向けでワイワイしながらいろいろな味が楽しめるのがいいですよね。」
—今は大人数での外食も簡単ではないなかで、そんなに揃ったプレートが届いたらまちがいなくテンション上がりますね!家にいながら夢が広がる瞬間です。最後に、デリバリーでの楽しみ方を伝授いただけるとうれしいです。
「基本はできたてのうちに食べてもらえるのがやっぱり理想ですよね。たとえばナポリタンだとひとつのワンプレートにサラダと一緒に乗っているので、レンジ対応の器にナポリタンだけ移して温めてもらえるとよいですね。たとえばご夫婦と未就学児の子ども1人の場合は、大人ふたり分で子どもも楽しめると思います。NEW PORTに参画したばかりの頃はメニュー数も多くなかったですが、最近では洋食プレートをはじめ種類もいろいろ増やしています。昔やっていた出前が今はNEW PORTで復活したので、出前で楽しんでいた方にも改めて自宅で味わってもらえるようになったよとお知らせしたいですね。」
横浜・山下公園で行われるトライアスロン大会にも毎年出場するなどスポーツマンの3代目。終始笑顔で対応いただき、その飾らない人柄に常連さんやファンの多さを実感しました。だれもが子どもの頃に大好きだったメニューの数々はもちろん、家族経営ならではのアットホームな雰囲気が、「また食べたいな」という笑顔の源泉であり、横浜市民が通い続ける理由だと感じたひとときでした。
センターグリル の商品はNEWPORTでオーダーできます。