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あらいきよてる
横浜に詳しいソーシャルデベロッパー。神奈川宿の丘の上で、住宅型複合施設「しぇあひるずヨコハマ」運営 。近年は空き物件や商店街の活性化など、横浜市内外のまちづくりや地域プロモーションにも関わる。週末カメラマン。二児の父でアニメ・サブカル好き。
同じライターの記事一覧馬車道の中でも、飲み屋が多い住吉町5丁目の路地に、神奈川県のすべての酒蔵の日本酒をそろえる、風情ある佇まいの小料理屋があります。
その名も「ほおづき」
今回ご紹介するのは、そこで二代目女将としてお店を切り盛りする小野寺さんです。
実は小野寺さん、三年間続けていた初代の女将から、何と飲食未経験でお店を継ぐことになったそうですよ!
お店を継いだきっかけ
小野寺さんは、もともと紙媒体のデザイナーをしており、「さくらWORKS<関内>」を拠点に活動をしていました。
日本酒が好きで、「くるくる関内」という名の、いわゆる「飲み歩きサークル」を立ち上げたコアメンバー4名のうちの一人だったそうです。
「くるくる関内」メンバーとは京都の日本酒バーあさくらさんと共同で「西の酒と神奈川の酒のイベント」を3年間開催するなど、なかなか精力的に活動していました。
単にお酒が好きなだけでなく、東日本震災の際には、東北を応援したい!東北の日本酒を扱ってはどうか?
と思うぐらい、地域社会への貢献の意識もあったようです。
小野寺さん自身は、お店を継ぐ意志を初め持っていなかったそうですが、他に後を継ぐ人がなかなか見つからなかったことと、こうしたお酒好きのメンバーに後押しされたことが転機となり、女将になる決心をしました。
未経験ながらお店を継げたのは、お酒が大好きなこと、地域への思いがあったこと、何より支えてくれる心強い仲間がいたからなのかも知れません。
好きなこと
ところで、店内に目を向けると、壁にもカウンターにも数多くの猫の絵や置物が飾ってあります。
「もしかして、小野寺さん猫が好きですか・・・?笑」
すると小野寺さん、満面な笑みを浮かべながら頷き、
「大好きですね~。夜は一緒に寝るくらい好きなんですよ。」
と答えてくれました!
それにしても、本当にたくさんの猫グッズがありますので、気になる方はチェックしてみてください。
もう一つ目に留まったのが、日本酒の本と共に置いてある、登山のガイドブック。
小野寺さん、実は山登りも好きで、自宅のある南区の飲み屋の店主を中心にとした山登り仲間と、日本アルプスなど上級者が行くような山にも一緒に登りにいくそうです!
雷鳥も好きで、よーく見ると猫にまぎれて雷鳥の置物もあります。
「雷鳥好きなんですけど、まだ見たことなくて、見てみたい!」
とのこと! (僕もかつて山登りをしていたので、盛り上がりました笑)
お話をしているうちに提供された、思わずため息が出てしまいそうなくらい綺麗な「お造り」
横浜中央市場から仕入れた新鮮なネタで、なんとこの日は鱧(はも)が! 感激です!
事業承継して困ったこと
業界未経験でお店を継ぐことになった小野寺さんは、
「自分が思い描いていた飲食店のギャップ(中と外)が大きくって、最初の1年は何が何だかわからなかった。」
と当時を振り返ります。
「それから、どうしても前の女将と比べられちゃう。だから、お客様との関係には気を遣いました。」
はじめは先代の女将の雰囲気をしっかり引き継ぎ、新しい常連さんが定着した頃から、小野寺さんとしてのキャラを徐々に出すようにしていったと言います。
事業が楽しくなった
常連さんが自分についてくれて来たことを実感できたのは、2年くらい経ってから。
「お客さんから背中を押されて、今まで続けてこれました。」
「飲食業や店舗自体にも馴染んで、今は自由にやっています。」
お話を聞いているうちに、小野寺さんの表情もだんだんと嬉しそうに。
こうした努力の積み重ねは、小料理屋ならではですね。
関内の客層
お店にはどういったお客さんが多いのでしょうか?
「このあたりはやっぱり会社員、サラリーマン。割と年配の方が多いですかね。」
常連になったお客さんが次のお客さんを連れてくることが多いそう。
あとは、1年に1回、パシフィコ横浜で開かれる学会のついでにくるお客さんもいるとか。
変な酔っ払いのような人はいなくて、マナーよく皆さん紳士だと言います。
店のこだわり
料理は和食提供に、とことんこだわっています。一品一品が素材を活かした作りで、見た目も美しい。
しかも、カウンターには燗酒を自分でするための「お燗器」までついているという、徹底ぶり!
お酒はあくまで神奈川のものに限定し、小野寺さんの出身地である、宮城をはじめとした東北の日本酒も置きません。お店を継いだ当時は神奈川県内の蔵のお酒は8蔵でしたが、現在は13蔵全てを提供しています。
定期的に蔵元を訪れ、ときにはお客さんと一緒に出向くこともあるそう。
日本酒好きにはたまりませんね!
料理長について
厨房で腕を振るうのは、料理長の栗林さんです!
栗林さんが「ほおづき」で調理するようになったのも、小野寺さんの代になってから。
前料理長が寿退社し後継者を探していたところ、偶然前のお店を辞めるタイミグで紹介されたのが、以前から南区のダイニングバー(店主が山登りのリーダー)で知り合いだった栗林さんだったのです!
知り合いだっただけに、お互いにびっくり!
関内での割烹料理での経験等があって、もともとの知人で信頼もあり即決定となりました!
こうして、空白期間なく、お店の営業ができるようになりました。
「厨房に二人で立っていると、夫婦ですか?とか、親子ですか?って聞かれることがあるんですけど、まったく関係はありません ! 笑」
そう苦笑いを浮かべる栗林さん。
野球が趣味で、今でも週末は子どもたちに野球を教えているとのこと。左利きのピッチャーなのです。
「自分は、女将のどんな天然(ボケ)も拾い、もれなく突っ込む役ですね 笑」
何という、バランスの取れた連携プレーでしょうか!
そんな掛け合いもお店のアットホームな光景になっています。
一人でふらっと飲みに入っても、ゆるく楽しめることは間違いないですね。
飲食店未経験ながらも、果敢に挑んだ女将の道。
先代の女将が培った神奈川の日本酒へのこだわりをさらに成長させ、常連のお客さんや料理長の栗林さんと共に、新しいお店へと確実に進化させているようでした。
コロナなどの脅威も乗り越えながら、馬車道の夜の顔としてこれからも大切にされていくことでしょう。
Shop info/店舗情報
- 小料理ほおずき
- 住所
- 横浜市中区住吉町5-63
- 営業時間
- 16:00~22:00
- 定休日
- 土曜日・日曜日