- 元町・石川町
- バー・バル
あらいきよてる
横浜に詳しいソーシャルデベロッパー。神奈川宿の丘の上で、住宅型複合施設「しぇあひるずヨコハマ」運営 。近年は空き物件や商店街の活性化など、横浜市内外のまちづくりや地域プロモーションにも関わる。週末カメラマン。二児の父でアニメ・サブカル好き。
同じライターの記事一覧馬車道の中でも桜木町に近いとあるビルの中に、こんな隠れ家的異空間があったとは。
最初にシュールティーを訪れたときに、かなりの衝撃を受けた。
知り合いの写真家、石倉潤さんが関内のバーを紹介するスライドで知ったお店。
店内とマスターの雰囲気が印象的で、早く行ってみたいと思っていた。
ドアの上のネオンサイン「Sur,e T」という独特の綴りに、こだわりを感じる。
シュールティーの店内は、まるでビンテージものの高級アイテムを扱う雑貨店のように、至るところ遊び心に溢れていて、お酒を飲む前から目を楽しませてくれる。
暗めの空間が、ゆったりと落ち着いた大人の社交場を醸し出す。
そして何と言っても、カウンター越しの棚にズラリと並ぶボトルと数々と、圧倒的なオーラを放つマスター。
これまで訪れたどのバーとも違う、しかしどこか懐かしい、不思議な感覚に包まれる。
有無を言わさない「横浜らしさ」がそこにあった。
マスターの井田さんは、とにかく美意識に余念がなく、渋くてダンディーだ。
「男は黙ってリーゼント」というフレーズが浮かんでくる。
休みの日もこの髪型、そしてスーツでバシッとキメて出かけるのが通例とのこと。
自分の中に確固たる軸がある一方で、お客さんとのコミュニケーションや会話にはバランスをとっており、一人でも安心して飲める空間づくりを心がけている。
「時代と共に価値観や常識は変わる。俺たちの頃は当たり前だったことが、今では不適切と捉えられてしまうことがたくさんある。」
お客さんの好みや気分によって、それにピッタリ合ったお酒を提供してくれる。
この日は、古き良きアメリカというテーマで、僕は1杯目にバーボンロック、2杯目にマンハッタンを注文した。
その日のお腹の空き具合で、チャームを選ぶことができるが、これがまたチャームとは思えないほど美味しく、夕食としても食べられてしまうほどだ。
(ただし、料理をウリにしているわけではないのでご注意を)
実は、カウンターの下にスポットライトが光り、ここにグラスをセットするときれいに輝く仕掛けが施されている。
女性が注文したフルーティーなカクテルには、少し色味をつけるなど演出もバッチリである。
気になる「Sur,e T」というお店の名前。
「シュールだね」というあのセリフの「シュール」が元になっている。
「そもそも、シュールの意味が分かってない人も多いけど、フランス語の『シュルレアリスム(超現実主義)』って、ダリとかピカソみたいな芸術作品にあるように、ありえない世界ってわけ」
そして最後の「T」は達也の「T」という意味だ。
似ている英語の綴りの「Sure」は、「もちろん」とか「いいですよ」という意味もある。
安心していられるというニュアンスも含んでいるそう。
とはいえ、井田さんの若かりし頃の不良エピソードは、聞いたことのないレベルで面白い。
昔はよく本牧で遊んでいた。 「DISCO LINDY」に「FREE BASE」などなど。
あの頃の本牧はアメリカだった。警察に追われて、本牧ベースの敷地に逃げ込んだことも!
「だって、あそこは治外法権だから。すると今度はMP(Military Police)に見つかって追いかけられた。M16(自動小銃)で撃たれそうになったよ(笑)」
映画やドラマの話ではなく、井田さんご自身の実話である。
井田さんは映画が大好きで、店内にはたくさんのポスターが張り出され、カウンター奥のモニターでもいつも映画が流れている。
「流すのはほとんど洋画だね。邦画は『あぶない刑事』くらい。昔の横浜の景色が見れるのがいい。みなとみらいだって、海と埠頭だったんだから。」
「マリリン・モンローも好きだね。でも抱きたいとかじゃない。女性として、もっと崇高な所にいる存在。」
「60年以上生きてきて、今一番残ってるのは食欲かな。でも美味しいもの毎日たべちゃダメ。普段は、やよい軒とか牛丼チェーンで全然問題ないよ。」
「好きな食べ物のトップは寿司!NEWoManの『SUSHI TOKYO TEN』あそこは最高だね。ほかの店と違って、玉とか小鰭から始まらず、いきなり大間のトロが出てくるから、ズキューンってなるよ笑」
「もちろんちゃんとした服で。それで映画観て過ごすのが休みの楽しみ方かな。」
自分が経験してこなかった青春時代、かつての横浜のまち、そして大人になってからの楽しみ方など。
井田さんと会話をしていると、人生の深みが増す。
そんなシュールなマスターがいるこちらのバーに、あなたも是非訪れてみてはいかがだろう?
Shop info/店舗情報
- LE BAR Sur,e T(シュールティー)
- 住所
- 〒231-0013 横浜市中区住吉町6-77福島ビル402
- 営業時間
- 月~土 / PM 6:00~AM 5:00 祝 / PM 6:00~AM 2:00
- 定休日
- 日曜日