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60年変わることのない港の顔、北欧料理の名店「スカンディヤ」総料理長 荒川裕之さん
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    あらいきよてる

    あらいきよてる

    横浜に詳しいソーシャルデベロッパー。神奈川宿の丘の上で、住宅型複合施設「しぇあひるずヨコハマ」運営 。近年は空き物件や商店街の活性化など、横浜市内外のまちづくりや地域プロモーションにも関わる。週末カメラマン。二児の父でアニメ・サブカル好き。

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    横浜を代表する北欧料理の名店「スカンディヤ」は、創業者の浜田八重子さんと、デンマーク人の夫、バオン・オーガ・ジェンソンさんが1963年に横浜貿易会館内に始めました。
    1階の青いひさしと2階のデンマーク国旗の赤いひさしが、北欧の雰囲気を醸し出しており、開港広場前の美しい景色をより一層引き立てています。

    店名は、ご夫婦が訪れたハリウッドのレストラン「SCANDIA」にちなんで名づけられたそうです。
    かつては貨物船で来港するデンマーク人の船乗りで賑わっていましたが、1970年代以降、船のコンテナ化が進むにつれて船員は減り、一般の日本人のお客さんが多くなってきました。

    総料理長の荒川さんが、初めてスカンディヤを訪れたのは1981年、23歳のときでした。

    当時の親方さんと2階のカウンター席に座ったときの最初の印象をこう語ります。

    「重厚で、とにかく異国でした。香りまでも。従業員の服装もメイドでしたね。」

    ご自身でも「料理バカ」という荒川さん、当時はフレンチのシェフとして腕を磨いており、25歳までに美味いもの食べるというミッションを自らに課し、ボーナスが出ると、神戸のポートフェアホテル、カハラ、大阪のステーキハウスなど一流のお店を巡っていました。

    ヘルプで来ないか、と声を掛けられたのがその数年後。
    スカンディヤの2号店「ダンマルク」からスタートしました。
    (別の記事で紹介したギリシャ料理店「オリンピア」の前進となる店です。)

    そこから、社長の浜田さんと二人三脚、いろいろな提案をしながら、長い年月を掛けてお店の伝統を守ってきました。一人の力では出来なかったと、荒川さんはかつてをふり返ります。
    他のスタッフも長く働いてる方が多いとのこと。

    1階の「スカンディヤガーデン」では、カジュアルにランチ、ディナーを楽しむことができ、近隣のビジネスマンや観光客で賑わっています。ドリンクの種類も多く、かつリーズナブルなのが特徴。
    友人同士と楽しく会話をしながら食事をするなら1階がおススメです。

    以前は駅から遠い立地でしたが、2004年のみなとみらい線開通後はランチが忙しくなりました。

    近年では、クルーズ船が大さん橋に着くようになり、再び外国人のお客さんが増え、往年の異国情緒を感じることができるようになってきたそうです。

    2階は大変静かで、高級感溢れるシックな空間が広がっており、季節の素材を使った本格的なコース料理を味わうことができます。特別な人と、特別な時間を過ごすのにこれ以上の雰囲気はないでしょう。

    荒川さんは、ずっと変わらない空間を保ち続けること、同じメニューでも、形や盛り付けなどスタイルを変えること、その両方を大切にしています。


    2階のカウンターでお酒を飲むならアクアビット。

    ジャガイモを主原料とした蒸留酒で、ウォッカ並みのアルコールの強さですが、ハーブのような香りがとても豊かなのが特徴。ニシンなどの北欧の伝統料理との相性は抜群で、訪れたら是非味わって頂きたい一品です。

    また洋食の老舗とあって、数々の有名人が訪れていますが、「ユーミン」こと松任谷由実さんが、婚約時に両家の顔合わせの場として利用したエピソードは有名です。

    「ユーミンのプロマイド撮影のときは、閉店後の25時まで残ってもらいました。」

    ほかにも、やっとこれた!というお客さんや、35年ぶりに来たというお客さんまで、同じ場所で長く営業している老舗ならではの、熟成された物語がたくさんあります。

    もう一つのおススメがマティーニ。
    実は、これらのお酒は荒川さん自らがバーテンとなり、カウンター越しから提供してくださいます。

     「料理に接客、今は何でも屋ですね。少ない人数で回していますから。」

    カウンターに座っていたもう一人の渋いお客さん、お店の常連さんで、お仕事はパイロット(港内の水先案内人)なのだとか。
    横浜の名店らしい、ゆったりと贅沢な時間が流れています。



    「以前に比べると、お客さんの雰囲気も変わりましたね。昔は一切子どもはいれなかった。
    今はコンビニに行くのと変わらない感じの方もいます。
    (せっかくならホテルに行く位の特別感があれば良いのに)」

    そんな格式あるスカンディヤの荒川さんですが、好きなお酒は意外にも芋焼酎。
    野毛にあった焼き鳥屋さんが好きだった。とお話してくださいました。

    今年でお店のオープンからちょうど60年。
    移ろいゆく港町を、この場所からずっと見守り続けて欲しいです。


    Shop info店舗情報

    スカンディヤ (SCANDIA)
    住所
    横浜市中区海岸通1-1 横浜貿易協会ビル
    営業時間
    11:00~22:00/日曜日のみ17:00~22:00 (1階のガーデンは昼も営業)
    ヨコハマフードラバーズ装飾
    ヨコハマフードラバーズ装飾
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